今という瞬間に在るとは

What Is Presencing? プレゼンシング とは何か

プレゼンス プレゼンシング 
プレゼンスは、いる・在るという存在を示します。また、今にいることであり、過去や未来にはいないのです。
プレゼンシングは、今に在ることを(自ら)選択することを意味します。

プレゼンシング

プレゼンス(presence)という語は、日本語にするなら「存在」や「出席(学校で名前を呼ばれて「はい、います」と存在を示す)」「態度」などがありますが、どの語も日本語ではプレゼンスの意味の一部しか伝えられないので、そのまま英語のプレゼンスを用いています。ここのところ経済学の理論でもこの語を用いているものが人気になっていますが、やはりそのままカタカナ表記にしているようです。

存在している、というプレゼンス、つまり今にある状態は、特に私たちのマインド・精神・心の有り様を指します。
マインドは、ほとんどの時間今にいません。少し考えてみましょう。
朝起きて、新たな1日が始まった、という時点から、もうその日の計画、人と会う約束、仕事のやり残し、昨日の友人や家族との会話で心にひっかっかったままのことなどを思い、あっという間で過去と未来のことでいっぱいになったうえ、気分も「新たな」気持ちから昨日の出来事や未来への不安の気分へと入っていきます。
さらに、思考は続きます。今日行うことを考えると、過去の出来事に関連する記憶、初めて会う人を思うと過去にあった失敗を思い出して落ち着かなくなったり、仕事仲間に顔を合わせると思うとまたあの人は同じ反応をするのだろう、と行った様々な考えが次から次へとやって来ます。あたかもそうした考えを巡らせていることが当たり前であり、また未来を予測して計画し、うまくやり遂げていくためのお決まりの儀式か願掛けか何かのように。

私たちのマインド・精神・心は、本当に今にいるということを知っているのでしょうか。あるいは、今にいることなど可能なのでしょうか。

大好きな人と一緒に過ごして話をする時間、寝食を忘れて没頭するほどの趣味、子供たちが夕食の時間を忘れて外でひたすら遊んでいる様子など、私たちはすっかりしていることに気持ちがいっぱいになり、時間を忘れる、という経験をします。そこには通常、未来への心配や過去の記憶の投影はありません。まさに、今という時間に浸っているのです。つまり、プレゼンス、今にある状態なのです。
しかし、この意識状態というのは、多くはたまたま起こるもの、というところでしょう。自分で今にいるぞ、今を楽しむモードになるぞ、と決めて、というものではないようです。

しかし、プレゼンスを自ら選択することも可能なのです。
そのプレゼンス、つまり今の瞬間に在ることを自分の意思で選択するのをプレゼンシング(presencing)と呼びます。
この語は、今という瞬間に在ることが全ての鍵で在ると気づいたジャックが、1980年代から使い始めたものです。当時大学院で研究して発展させていたボディワークの手法と概念について論文や記事を書いていた際、ライティングコーチには「その語はやめておいたほうが無難だ」と言われたそうですが、ジャックはそのまま使い続けています。 

 

プレゼンシングとボディワーク、ソマティクス

プレゼンスを自分で選択する、つまりプレゼンシングを可能にするのは何でしょうか。
それは、肉体です。私たちの身体は、決して過去の歴史から生まれているものではありません。今という瞬間に、あらゆる機能を全て行い、私たちを生かし続けてくれているのです。ここに今にいることが難しいマインドを用いて、瞬きや呼吸、消化や鼓動のコントロールをしようとしたら、たちまちどうにかなってしまいそうになるでしょう。

仏陀が菩提樹の下に座り、悟りを開いた際に行っていた瞑想と言われるものがあります。それはヴィパッサナ瞑想法と呼ばれます。
ヴィパッサナ瞑想法では、常に身体の感覚に注意を向け続けます。どのような考えが浮かぼうとも、身体に不快感や痛みがやってこようとも、感情が上がってこようとも、肉体を感じながらマインドで起こることを観察し、座り続けます。
仏陀は、肉体で起こる感覚や刺激感覚は、全てが私たちのマインド・精神・心に沿っていることに気づきました。つまり、マインドで考えたり思い出したり反応したりしていることが、そのまま肉体という忠実な僕のまさに今、その瞬間の感覚として表れるのです。

それならば、その肉体で起こる一瞬ごとの感覚を感じたなら、私たちは「今」という瞬間に入ることができるのではないでしょうか。
肉体という今にしかないもの、今の瞬間にしか起こらない肉体での感覚を感じることを通して、今の瞬間になるのです。
プレゼンスの状態になることを自ら意識的に選ぶ、つまりプレゼンシングによって今に在るという選択をするのは可能なのです。

具体的には、どのような方法があるのでしょう。
何千年も前から実践され続けているヨガは、本来その方法のひとつです。呼吸と意識をもって、ポーズをとりながら常に身体感覚を感じ続け、身体とマインドの統合をはかります。
瞑想法も、先に挙げたヴィパッサナのように肉体を通して今に至れるものがあります。

そして、肉体に働きかけるボディワークもプレゼンシングの手法になります。
しかも、ボディワークは施術者の手があり、触れてくれるその手が、身体の感覚を感じ取る手助けをしてくれます。

触れるという行為も、今の瞬間にしか起こりません。
また、身体を感じている、感覚を感じ取っていることを認識しているというソマティクス的な意識は、こうした外からの手助けによってよりはっきりとしたものになるでしょう。

その瞬間の感覚を感じる選択をするなら、ボディワークを受ける側も施術をする側も今にいられるようになり、今という瞬間を分かち合えるようになっていくのです。

03-3427-5331
トリリアム インスティテュート ジャパン