プレゼンスを自分で選択する、つまりプレゼンシングを可能にするのは何でしょうか。
それは、肉体です。私たちの身体は、決して過去の歴史から生まれているものではありません。今という瞬間に、あらゆる機能を全て行い、私たちを生かし続けてくれているのです。ここに今にいることが難しいマインドを用いて、瞬きや呼吸、消化や鼓動のコントロールをしようとしたら、たちまちどうにかなってしまいそうになるでしょう。
仏陀が菩提樹の下に座り、悟りを開いた際に行っていた瞑想と言われるものがあります。それはヴィパッサナ瞑想法と呼ばれます。
ヴィパッサナ瞑想法では、常に身体の感覚に注意を向け続けます。どのような考えが浮かぼうとも、身体に不快感や痛みがやってこようとも、感情が上がってこようとも、肉体を感じながらマインドで起こることを観察し、座り続けます。
仏陀は、肉体で起こる感覚や刺激感覚は、全てが私たちのマインド・精神・心に沿っていることに気づきました。つまり、マインドで考えたり思い出したり反応したりしていることが、そのまま肉体という忠実な僕のまさに今、その瞬間の感覚として表れるのです。
それならば、その肉体で起こる一瞬ごとの感覚を感じたなら、私たちは「今」という瞬間に入ることができるのではないでしょうか。
肉体という今にしかないもの、今の瞬間にしか起こらない肉体での感覚を感じることを通して、今の瞬間になるのです。
プレゼンスの状態になることを自ら意識的に選ぶ、つまりプレゼンシングによって今に在るという選択をするのは可能なのです。
具体的には、どのような方法があるのでしょう。
何千年も前から実践され続けているヨガは、本来その方法のひとつです。呼吸と意識をもって、ポーズをとりながら常に身体感覚を感じ続け、身体とマインドの統合をはかります。
瞑想法も、先に挙げたヴィパッサナのように肉体を通して今に至れるものがあります。
そして、肉体に働きかけるボディワークもプレゼンシングの手法になります。
しかも、ボディワークは施術者の手があり、触れてくれるその手が、身体の感覚を感じ取る手助けをしてくれます。
触れるという行為も、今の瞬間にしか起こりません。
また、身体を感じている、感覚を感じ取っていることを認識しているというソマティクス的な意識は、こうした外からの手助けによってよりはっきりとしたものになるでしょう。
その瞬間の感覚を感じる選択をするなら、ボディワークを受ける側も施術をする側も今にいられるようになり、今という瞬間を分かち合えるようになっていくのです。