実践での問題や挑戦、それらを倫理的に扱うスーパーヴィジョンを学ぶ 1日クラス

Ethics and Supervision 倫理とスーパーヴィジョン

倫理とは何か?

倫理は道徳とは異なります。同じように捉える向きもありますが、道徳は規範や社会通念におけるルールを含むことがある一方、倫理は必ずしもそうした外部からの規制に沿うものではありません。
倫理を培うことは、自分自身のあり方や人との関わり方、相手そして自分自身への敬意といった深い領域へと入ることでもあります。倫理は、ひとりひとりが自覚を持って育て、自分自身の成長へとつながるものでもあるのです。

1997年、ジャックはアイダホ州でのボディワーカー(手技療法家)の学会で職業的な倫理について教えるよう要請を受けました。ジャックは、1995年よりボディワーカーにスーパーヴィジョンのセッションを行い、仲間同士でのスーパーヴィジョンの行い方を教えて来ました。
米国では今や、すべての手技療法家が2年ごとに倫理のクラスを受けることが義務付けされています。
 
倫理という用語は何を意味しているのでしょうか。
倫理には、公平性とクライエントを操作しないという自覚が含まれます。また倫理においては、クライエントとの関係性における私たち個人の境界線のもちかたもその内容に入ります。
ジャックは長い年月の中、個人の倫理と職業的な倫理についての見解を深めて来ました。
 
私たちのクライエントは、私たちのハンズ-オン(手を置く・手で触れる)ワークを通したケアで、いかに影響を受けうるのだろうか。
クライエントとの関係性の理解と経験は、治療的なセッション・ボディワーク(手技療法)・セラピーのセッション一般にいかに影響をするものなのか
 
クライエントによっては大変親しい関係性を築くこともあれば、もっと距離を置く関係性のクライエントもいます。私たちの仕事において、そうした関係性が役立つもの、あるいは役に立たないものとしてどのように見ていけばいいのでしょう。
 

私たちの実践の中で生まれてくる、クライエントとの関係性や倫理的なジレンマについて、お互い仲間として話し合い、経験を分かち合い、実践的に倫理について学んで行きます。

 
スーパーヴィジョンは、ここでは監督や監査というよりも、相手(相談相手や同業者)の話に耳を傾け、その人自身が起こっている事を自分で把握し理解を得て次へと進めるよう手助けをする手法と言えます。一般のカウンセリングやアドヴァイザーのように提案をするよりも、その人がより包括的にものを捉えられるよう支えて行く話の聞き方になります。
 
このクラスでは、お互いの仲間同士のスーパーヴィジョンのやり方の導入もして行きます。また、経験を積んだスーパーヴァイザーによるスーパーヴィジョンのセッションの大切さや有効性につても理解していきましょう。
 
あらゆるボディワーク・セラピー・ヒーリング・カウンセリングで用いることができる倫理とスーパーヴィジョンは珍しいものです。倫理観を磨くことは皆さんの手技や手法とご自身のあり方・関わり方、そしてクライエントとの関係性を包括的にし、成熟して行くことにつながります。その意味においては、手技や手法の種類は問わないのです。
 
現実に即した具体的な倫理の持ち方を学び、独りで抱え込むことのない健やかな実践をしていける道を探ってみて下さい。

倫理というと何か難しい学問のように思えるかもしれません。
ですが、例えば以下のようなことがあなたのセッションや仲間との関係性、仕事における問題として起こったとしたなら、それは倫理に関わる事柄です。

・クライエントがセッションの代価として物品や援助を申し出てきた
・クライエントと大変親密な関係性になった
・同僚が職場でパワーハラスメントを受けているのを知ってしまったが、どうしていいのかわからない – 自分が職を失いかねない
・職場環境に問題があっても、それについて改善されない状況にある
・同僚がクライエント・患者に不適切な(伝えている情報と異なる)療法を用いて施術しており、本当のことを伝えていない
・クレームをつけてくるクライエントに嫌がらせを受けている
・クライエントに性的な関係性・手技を求められた
・今している手技や療法に満足していない自分自身に気づいているが、職を失いたくないのでそのままになっている
・家族や親戚、友人に無料で施術をしてくれとよく頼まれる
・自分のケアをないがしろにしている

などなど…

これらは倫理的に考察すべき例の一部であって、何も特殊なことでも珍しい事例でもないことがお分かりになるはずです。

こうした出来事や懸案事項を、私たちは我慢したり見過ごそうとしたり、他人に知られないよう秘密にすることもあります。また、人によっては同僚と一緒に職場外で上司の悪口や問題点について話してしまい、それが外部の人の知るところとなる、といった深刻なケースになるものもあります。
こうした問題が生まれる背景には、まず倫理観への理解と認識が不十分であること、倫理的な考え方の訓練がなされていないこと、そして守秘義務を守って話を聞いてくれ、あなた自身が道を見出して行けるよう支えてくれるスーパーヴァイザーがそう多くは存在していないことなどが挙げられます。

ボディワーク・手技療法では、個人経営やフリーランスである場合も多いので、何か問題があっても自分一人で解決しようとして孤立してしまう状況にあるとも言えます。
さらに、もしも同僚や学んでいる仲間がいるとしても、皆同じように自分の中で解決しようとしたり、ことを荒立てまいと秘密にしたりすることも珍しくはありません。しかし、それでは誰かが犠牲者となり、私たちの本来の役割を果たすには不適切な状況を作ることになってしまいます。そこには職業的・個人的倫理が欠けているのです。

これまでに学んできた手技や療法、技術を学んだ学校や講座、医療における約束事なども含め、実践のなかで現実的に起こるディレンマ(板挟みの状態)や複雑な問題などについて考察し、ケアや療法に携わる上で健全な環境を整える機会を得て下さい。スーパーヴァイザーを得るだけではなく、仲間とのスーパーヴィジョンが実践できるようになると、お互いを手助けしながら育て合う環境も培えるようになっていきます。

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